ほのかに紅茶の優しい香りが漂う。
貴方も1杯、如何ですか──?
ここは街外れの喫茶店。夕焼け空に照らされている店外には星屑のランプが飾られており、小鳥の唄い声が聞こえる。そこに蓄音機の音色が響く。
「いらっしゃいませ♪」
店の奥から歌うような声色で出迎えてくれた。
綺麗な長い白髪を後ろで結っていて、紫陽花を閉じ込めたような艶やかな目が、どこか浮世離れした様な青年だった。
この喫茶店の少しだけ和風な制服がぴったりだ。
「当店おすすめ、紅茶1杯如何ですか?
くふふ、今日は特別に“すいーつ”を作ったので良ければおひとつ試食していきませんか〜♪」
少しだけ糸切歯が見えた気がしたのは気の所為だろうか…?
「…うま!」
僕は感動した。今までこんなに美味しいスイーツと紅茶は飲んだことが無いと。
「えへへ、それは良かったです♪」
そう、満面の笑みで言う店員さんがとても可愛い。
窓からは綺麗な紅葉が見え、まるで幻想の中のような場所だな、と僕は心の中で呟いた。
シックな内装にアンティークな家具。店主のお兄さんに色々と話を聞いてみたところ、骨董品店も兼ねているらしい。
ゆっくりと紅茶を飲み、窓を眺める。
疲れが全て浄化された気分だった。
それから暫くして、ふと時計を見てみるといつの間にか3時間も経っていた。
微睡みのように陽の光に溶けてゆく、儚い時間だった。
「ありがとうございました!
またのご来店、お待ちしております〜♪」
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お題:紅茶の香り
10/27/2024, 9:51:03 PM