もうひとつの物語
ここに一つのプリンがある。
私はこれを食べてもいいし、食べなくてもいい。
目の前には机の上にプリンが乗った皿が一つと、スプーンが置いてある。
まるで食べてくださいとばかりの配置だ。
目の前に座っている君が、私が食べるのを期待している目で見てくる。
上手にできたよ
私はスプーンを手に取り、プリンをすくい、口に入れた。
咀嚼し、甘さを味わって、飲み込む。
食べない選択肢などないのだ。
君は嬉しそうにこちらを見て笑った。
美味しいでしょ
私は食べながら頷く。
食べない選択肢を選ぶことで開ける物語があるとして、私はそれを選ばない。
この選択肢が絶対いいに決まっているのだから。
もう一つの物語は、始まることはない。
10/29/2024, 10:51:22 AM