今は昔のお話です
ここには小さな家があって
西日の差す六畳間がありました
おばあちゃんは老眼鏡をかけてなお
見えないなぁって言いながら
なんとか糸を通し
ミシンをカタカタかけてました
雑巾を縫ったり
お友達に巾着を作ったり
孫娘のお洋服をつくったり
カタタッタタッタッタ
カタカッタ♪
ミシンは楽しそうに歌ってました
その音を聞きながら
いつも寝てばかりの白猫がおりました
陽射しはサラサラ
ミシンはカタカタ
猫はウトウト
そんな部屋の片隅で白猫と並んで
わたしは陽射しの浅瀬に
ユラユラと浸りながら
本を読んでいました
出来たわ
おばあちゃんが嬉しそうに
瞳を輝かせます
とても愛らしい笑顔で
その時、小さなわたしにも
年老いたおばあちゃんが
かつて可愛らしい娘だったことが
不意にわかったりしたのでした
祖母と猫とわたし
それぞれに過ごしながら
不思議な優しい時間が流れていた
小さな部屋のお話
(テーマ 部屋の片隅で)
12/7/2024, 4:24:56 PM