エレン

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テーマ「やさしい嘘」



あなたは意地悪。
付き合いたての頃は
連絡もマメでよく私を気遣ってくれた。

仕事で落ち込んだ時には必ず
よく私をご飯に連れて行ってくれたよね。
そして、気が済むまで愚痴を聞いてくれた
あなたが私の心の支えになってくれた。


~付き合って3年後~

付き合って同棲し始めた頃から
あなたは変わってしまった。

冷たくなったあなたの態度。
同棲した途端、彼は笑わなくなった。
まともな会話すら無くなった。

仕事で遅くなるのだと言ったあなた。
他に女がいるのかも?と密かに浮気を疑った。

そんなある日~

彼の入浴中にスマホを盗み見た。
あなたがいじってるの見た事があり
パスワードは把握済み。

しかし、スマホに女性との怪しい
やり取りは見当たらない

そればかりか身内以外の
女性の連絡先が一件もない。


毎日、日をまたぐ頃に帰ってくる彼。

彼「ただいま。」

その声に目が覚める。

「おかえり。」

彼「 あのさ、話があるんだ… 俺と別れてくれ。」

「どうしてよ…!私のどこがダメなの?」

彼「ごめん。もう君とは無理なんだ
だから他の男と幸せになれよ。」

5年間、同棲した彼から
その日の深夜に突然、別れを告げられた。


後日~

彼の部屋にまとめられてた
私の荷物が彼から届いた。



それから半年後~

仕事で同棲ハウスがあった地域に来ていた私は
少し懐かしく思って、家に寄ってみることにした。

が、しかし… 彼はすでに退去していた。

彼の行方が気になった私は
翌日、探偵さんに調査の依頼をした。

その後 連絡が来て
急いで探偵事務所に向かうと

ある真実を告げられた。

探偵「あなたの彼氏さんですが…
心の準備はよろしいですか?」

神妙な面持ちでそう告げた。

「はい。どんな事でも受け入れます。」

探偵「彼氏さん、今は
仕事を辞めてここにいます。」

白い建物がある敷地の中庭で
車椅子に乗った男性を押す職員の
1枚の写真を目の前にスッ…と差し出された。

探偵「ここは、末期ガン患者の
終末期医療の施設です。」

その言葉と写真で現実が飲み込めず
固まった。

「え?末期…ガン?そんなの…わたし。」

ガリガリに痩せてる男性が別人のように
思えたが、弱々しい笑顔は付き合った頃の
あの優しかった彼そのものだった。

一人で必死に痛みと闘い、通院しながら
今まで私に隠してたんだね…

正直で真面目なあなたがついた
最初で最後の精一杯のやさしい嘘。

今まで気づけなかった自分への怒りと
彼への申し訳ない気持ちで涙がとめどなく流れた。

探偵に施設の住所を聞いた後、
探偵事務所を出ると私は彼に会う事にした。

翌日、私は例の場所へ

私を前にした彼は驚いた顔をして
力無く笑った。

彼「どうして、ここに?」

「探偵さんに依頼したの…私、あなたの事を何も
分かってなかった。今までごめんなさい。」

彼「なんで謝るの?俺が振ったのにさぁ…」

「それは私のためでしょ?もう知ってるんだからね?
幸せにしたいと思ったから、私を振ったんでしょ?
だから、罰として私に最期を看取らせてよ
今度は私があなたの支えになりたいの」

彼「分かった。ありがとう。」

それから時は経ち~

その時は突然に来た。

彼は憑き物が落ちた満足したような
柔らかい表情で愛する彼女に
看取られながらこの世を去った。

1/24/2025, 2:20:59 PM