胡星 (小説書き)

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テーマ「日常」


今、私が住んでいる国では不思議な現象が起きている。

それは、1日につき10人。


【人が死ぬ】


というものだ。

これは未だにどういったことが原因で起きているのか解明されていない。

この現象は避けることはできず、ただ運命を受け入れるしかない。

「ピコン♪」

携帯の通知音が部屋に鳴り響く。

私はSNSを開き、1枚の投稿を確認する。

『本日、別れを告げるもの。』

その文章の下には1枚の画像があり、そこには対象者の住んでいる地域と、対象者の本名が載っていた。

『福島在住、○○○○さん』

「うそでしょ……」

それは私の友達の名前だった。

この国には約1億人の人々が住んでいる。その中から1日10人死ぬ人が選ばれる。それに対して、この国では毎日2000人以上新しい命が生まれる。

全体の人口で増減で考えたら、10人なんて痛くも痒くもない。それに気づいた人々は次第にこの現象に対して何の関心も抱かなくなっていった。

それでも命の価値に変わりは無い。

『だい、じょうぶ?……』

言葉が見当たらなかった。とにかく思い浮かんだものをメッセージとして送った。

『今までありがとう。』






私の友達がこの世を去ってから1週間が経った。その間にも私の友達は次々とこの世を去っていった。

1日10人。少ない数なのかもしれない。それでも明日死ぬかもしれないという恐怖が私を襲う。

次は私の番だ。

その時、ふと思った。

昔みたいな「日常」が欲しい……

この現象は10年前から始まった。

それより前は何もない普通の生活を送っていた。

その時は退屈だと思っていたけど、今となってはその時が1番平和で愛おしい日々だった。



大切な日常というのは、意外とすぐ近くにあったんだな。

そう実感した。






あとがき
「本当はもう少し物語自体を長めにしたかったのですが、時間の都合でコンパクトにしました。短い物語の中で伝えたいことを伝えられるようにしました。それでは、また次の作品で会えたら会いましょう。」

6/22/2024, 12:17:13 PM