想像ついただろうか。
こんな出会いが待っていることを。
「ねえ。一年前、なにしてた?」
なんの気も無しに、青年が恋人にそう聞く。
彼女は驚いた表情で振り返ると、哀愁漂う顔をして、視線を戻した。
「余り……思い出したく、ないです」
俯く彼女を見て、今度は青年の方が驚く。
普段、明るい表情をしているから、こんな顔をするとは思わなかった。
ひとつ、瞬きをすると、目の端に雫を貯めながら微笑む。
青年は何も言葉に出せず、立ち上がって彼女を抱きしめた。彼女もそれに応える。
「ここに来て。あなたと出会えて、今がとてもしあわせなんです」
おわり
お題:一年前
6/16/2024, 11:37:59 AM