300字小説
子供の守り神
生後半年を過ぎると赤ん坊は母親から貰った免疫が切れるという。
うちの娘も七ヶ月で初めて風邪をひいた。熱を計り、座薬を入れ、鼻水を吸い、ぐずるのを妻と交代で抱いてあやす。変われるものならと抱きながら、うとうとしていると
『姫の一大事じゃ!』
『使いの者は帰って来ぬか!』
『ただいま帰り申した!』
『して、狐の長老はしかと薬を渡してくれたか!?』
『供物を渡したら、大喜びでくれ申した!』
『ささ、姫。この薬をお飲み下され』
翌朝、娘の熱はすっかり下がっていた。じいさんに、この家には子供の守り神がいるとは聞いていたが……。
「……俺の秘蔵の地酒が無い……」
どうやら、供物とやらに使われたらしい。
「……まあ、いいけどな」
お題「風邪」
12/16/2023, 10:50:07 AM