神木 優

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 小説を書くにあたってインスピレーションはとても大切だ。同じ時間、同じ場所、同じ毎日を繰り返していたら思考も発想も凝り固まってしまう。
 だから僕はよく散歩をしている。
 新しくできたカフェに入ってみたり、骨董店を眺めてみたり……
 だが、いいアイディアが降ってくることは稀だ。普段はただの散歩で終わってしまう。
 今日の散歩も収穫はなしか……
 そう思い、帰路についた時、ふと視線の先に自動販売機があった。別になんてことはない普通の自動販売機。喉が渇いているわけではないが、商品を眺める。
 黒色の炭酸水。お茶。スポーツドリンク。コーヒー。
 そして下の段、一番左にあるハテナと書かれたドリンク。百円玉を入れてハテナのドリンクを押すとランダムに商品が出てくるらしい。 
 面白そうだ。
 そう思い財布から百円玉を取り出して、硬貨を自動販売機に入れる。ボタンの色が灯ったのでハテナを押した。
 ガコン、と商品が落ちてくる。
 何が出るのか分からない期待と不安の入り交じる中、商品を手にとって不覚にも笑ってしまった。これだから散歩はやめられない。
 冷たくて結露しているおしるこをカバンの中に入れて、僕は帰路についた。

7/20/2024, 1:33:56 AM