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ここに入ってどのくらい経ったのだろう。灯りといえば小さなランタンぐらいで、洞窟の中はほとんど真っ暗に思えた。昔読んだ小説では、洞窟に閉じ込められた悪者がコウモリも捕まえて食べたのに飢えて死んでいたっけ。冷たい岩壁をつたってゆっくりと前に歩んでいく。ときおり完全な暗闇に包まれると、地図もコンパスも意味がないようにみえた。ロープを頼りにして、それでもこのような場所からは一刻もはやく抜け出さなくてはともがいて、とても長い時間進み続けた。

そしてそれは、突然あらわれた。あまりに急なことで自分が死んでしまったのかと錯覚さえしたほどであった。
そこには青碧に輝く水だまりと、他に類をみないような大きな鍾乳洞が厳かにもたたずんでいた。見上げると、陽の光が射し込んでいるのがおぼろげに分かった。
「美しい……。」
思わずため息がこぼれた。この景色を形容する言葉を俺は知らない。
やっぱり冒険家って最高!

10/29/2024, 2:25:39 AM