明永 弓月

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 窓に叩きつけられた雨音が意識を覚醒させていく。どうやら雨が降っているらしい。
 身支度を終えて家を出る。窓から見ていた景色と変わらず雨が降っている。地面も軒も軽快に雨音を立てている。傘を開く。今日の雨は昼過ぎには止むだろうと、気象予報士が言っていた。そうなれば、この傘は帰りには荷物になってしまう。あるいは、忘れて帰るかもしれない。

 予報の通り、夕方を前に雨は止んだ。雲もすっかり少ない。
 橙に色付く空。紫から紺へ、暗くなるグラデーションも見せている。夜になろうとしている。
 この夜を越えたら、明日という名の今日が来る。昼までの雨のことなど忘れて夕焼けに照らされた道を歩く。家に帰ったら明日を迎える準備をしよう。

 明日の空模様は晴れ! 一日中快晴が続くでしょう!
 少し浮かれたように心の中で言ってみた。


 傘を忘れたことに気付いたのは家に着いたときだった。

8/19/2024, 11:20:37 PM