「お兄さん、傘忘れちゃったの? 入れてあげる」
10年以上前に潰れたタバコ屋の軒下で雨宿りをしていると、少女に声をかけられた。
180センチ超えの男が子ども用の傘に入れてもらうのは忍びないと思い断るも、少女は強情だった。
「お兄さんのおうちあそこでしょ? すぐだもん。そんなに濡れないよ」
「じゃあ、えと、お邪魔します」
登下校中に姿を見ていたのはお互い様らしく、家の場所を指され観念した。
さすがに傘を持つのは譲ってもらい、少女が濡れないように傾けようとして、傘の内側が目に入った。
「えへへ、すごいでしょー。アカリのお気に入りなの!」
女の子にしては珍しく真っ黒な傘を持っているなと思ったが、その内側は外面に対して明るかった。
ぽつぽつと黄色い点がそこかしこに飛散しており、それはまるで――
「プラネタリウムみたいでしょ!」
家の前まで送ってもらったあと、シャレたお菓子なんて用意してなかった俺は、その足でコンビニに行き後日アカリちゃんにお礼をした。
/6/2『傘の中の秘密』
広告視聴完了前にアプリ落としたので
前の内容消えてしまいました……。
6/3/2025, 7:43:55 AM