梅雨の時期には珍しい、よく晴れた日だった
ジリジリと熱い太陽の下、黒いアスファルトが熱を反射して焼かれる心地がした
ふいに、誰かに後ろから話しかけられた
青いワンピースの可愛らしい少女だ
「これ、落としましたよ。」
白いの手の中に収まっていたのはお守りだった
遠くに住む祖母が自分のために縫ってくれたものだ
「ありがとうございます。助かりました。」
お守りを受け取ると少女はほっとしたように笑った
まるで百合の花のように華やかだった
「いえ、すごく大切なものなんだろうなって思ったので急いで渡さなきゃって」
「じゃあ、私はこれで!」
そう言って少女は足早に前を行く
「待って、お礼を…!」
お礼をさせてください。
その言葉はつんざくような急ブレーキの音にかき消された
黒いアスファルトに横たわった青いワンピースと白い肌を、赤い血が染めていく
その様子を、祖母からもらったお守りを握りしめながら見つめることしかできなかった
それが、名前も知らない君の最期だった。
〜君と最後に会った日〜
6/26/2023, 1:43:08 PM