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 世の中の皆様の中には、クリスマスの日に恋人と過ごす人も多いだろう。
 だがクリスマスは私にとって、一年のうち最も気が張る一日である。

 別に恋人の彼氏が嫌いなわけではない。
 彼は毎年12月24日の夜は、仕事で出かけてしまう。
 そして翌日25日、仕事を終えて疲労困憊の彼を、いろいろフォローしないといけないからだ。
 勘違いしないでいただきたいが、別にフォローするのが嫌なわけではない。

 私はドジな性格で、むしろクリスマス以外はフォローしてもらっている。
 なので、一日だけ彼の世話をするのは、むしろ恩返しになり嬉しいのだ。

 じゃあ、なぜ気が張るのか。
 彼には大きな秘密があるのだが、それを知らないフリをしないといけない。
 その秘密とはなにか、言わなくても分かるだろう。
 そう、恋人はサンタクロースなのです(ばーん)。

 一度軽くカマをかけたことがあるのだが、その時とんでもない絶望の顔をしていたので、バレてはいけないのだろう。
 もちろん普段は秘密がばれないように、うまく立ち回っている。
 付き合ってから、初めてのクリスマスまで少しも疑いもしなかった。

 でも、クリスマスの日だけは、疲労のために彼はポンコツになる。
 サンタの服が脱いだまま彼の部屋に投げてあったり、プレゼントを配るための子供のリストが投げてあったり。
 そういえば、トナカイを連れて帰ったときもあるな。

 そのあたりまでは‘疑惑’レベル、というか疑惑だと信じたかった。
 決め手は、迎えに来てくれと言って迎えに行くと、空飛ぶソリから降りているところを目撃してしまったことだ。
 あれは言い訳できんよ。
 何も気づいていないフリをするのは大変なのだ。

 そして、今年のクリスマスの日、彼の部屋の前までやって来た。
 一度深呼吸する。

 大丈夫、私はあらゆる状況を想定して、イメージトレーニングした。
 どんなに予想外のことがあっても、なんとか出来たじゃないか。
 今年もうまく切り抜けることが出来る。
 そう何度も自分に言い聞かせる。

 そしてもう一度深呼吸して、呼び鈴を鳴らす。
 少しの静寂ののち、彼がドアを開けて迎え入れてくれる。
 その彼を見て、私は固まってしまう。
 さっそくハプニングだ。

 今日の彼は、着替えていないのかサンタ服のまま。
 なんとかリアクションせずに部屋に入ると、部屋の中にはトナカイが3匹いた!
 思わず目をそらすと、その先にはソリがフワフワ浮いている。
 よく見れば、ソリの中に酔いつぶれた知らないおじいさんがいる。

 自分でも顔が引きつっているのが分かる。
 これは想定外だ。

 これ、どうやって知らんぷりしよう。

12/26/2023, 9:57:01 AM