内気な青年がいた。彼の日常はひどく平凡だったが、毎日フラワーショップで一輪の花を買うことが彼の日課になっていた。
店内では美しい女性が働いていた。
ある日、彼女は毎日訪れるこの青年に優しく声をかけた。
「いつもありがとうございます。プレゼントですか?」
その言葉で青年の心はわずかに揺れ、顔が赤くなりながら
「いや、まあ、花が好きなんです」
と小さく答えた。
それを聞いて、彼女は花のような笑顔を浮かべて
「素敵ですね」と言った。
青年は、彼女のその笑顔を見て幸せを感じた。それが彼にとっての真実だった。
彼がそのフラワーショップを訪れるのは、花が欲しいということより、彼女に会いたいという思いからだった。
そんな彼の気持ちに彼女は気付くことはなく、二人の関係に進展はいつまでもなかったが、それでも青年は満足だった。
「一輪の花」
2/25/2025, 12:11:20 AM