透月燈

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声が枯れるまで貴方に伝えたい。
これは、貴方の為に贈る青春という歌なんだから──。

僕は合唱部員だ。
中学生になって初めて合唱部に入った。
他にも好きなことは沢山あったけれど合唱部を選んだのは必死に歌う先輩に憧れ、一目惚れしたからだった。
僕の学校は中高一貫校なのもあり、高校の先輩方の一生懸命練習する姿を追いながら練習した。
プレッシャーに気圧されそうになっても必死でみんなについていけるように縋り付いた。
最初は合唱部に入って初めて歌を歌い始めたため、楽譜さえ読むのがままならなかった。
レガートやピッチなど、意味のわからなかった言葉は回数を重ねる毎にだんだんとわかるようになっていった。
でも、僕には分からないことも多かった。
よく、「上手だね」なんて言われるけれど、上辺だけの上手さなんていらない。練習とコンクールを重ねているうちに真実の上手さは心を揺さぶることが出来るかどうかだと気づいてしまったからだ。
そう思いながら時が経ち、いつの間にか高校3年生になっていた。

これは、高校生最後のコンクールだ。
中学一年生の時の初めてのコンクール出場と同じぐらい緊張で震えた。僕たちが高校3年生として合唱部を背負っているのだ。
でも、あの日一目惚れした先輩のようになるために、今までやってきたこと、そして恩師のことを思い浮かべながら歌った。
数々の思い出が脳裏に浮かんで目が潤んだが、それでも歌い続けた。
──結果発表の時。
「───高等学校、金賞!」
その瞬間、会場には歓喜の声で包まれた。僕たちの学校は金賞を頂くことが出来たんだ。
涙が溢れ出てきて、止めることなどできなかった。
本当に大変な道のりだったけれど、今まで自分と、それからみんなとで必死に頑張ってきた成果だと、その時初めて自分が好きになれた気がした。

声が枯れるまで伝えたい。
貴方が大好きだってことを。
「あの時の先輩のようになれていればいいな…。」
星空を見上げながらそう願って、僕は歌い続ける。
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お題:声が枯れるまで

10/21/2024, 10:18:16 PM