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『貴方の欲しい物はなんですか?』

貼り付けられたような笑顔で貴方はそう言った。

『ココには何でもございますよ!富、名声、力、みーんなが喉から手が出るほど欲しいと思っている物ぜーんぶご用意出来ますよ!さぁ、いかがなさいますか?』

機械音のようにペラペラと貴方は喋り続ける、そこには貴方の感情なんて存在しないのだろう。

「なんでも、ですか」
『えぇ!なんでもです!その代わり……タダではないですけどね!』

それなりの対価は頂きますよとそう言われても怯む事は無かった。

『さぁさぁさぁ!早く早く!』

きっと貴方はそう言うよう仕向けられてるんだろう、そうする事が義務なのだろう。
そんな貴方に、僕から言える事なんて1つだけだった。

「貴方に一目惚れしたんです、高望みなんてしません……貴方の、隣に居る権利をください」

……初めて貴方は笑顔を崩しましたね。
やっと人らしい顔をしてくれましたね。

「好きです、貴方の事が」

振られたって良い。
僕はもう満足してしまった。

「……僕の本当の夢は、貴方のその人間らしさを見る事でした、隣に立ちたいって気持ちも嘘では無いけど……満足しました」

貴方の瞳は揺らいでる、自分勝手でごめんなさい。
愛しています、貴方の事を。
どうかその顔を、失いませんように。

彼女の声が僕に届く事はもう2度とありませんでした。

『……何が人間なのでしょう、私も貴方も、人間なんかではないのに、どうしてこんなにも内部が痛いのでしょう』

停止した僕の手を握り彼女は小さく呟いた。

『生まれ変わったら、貴方と共に生きてみたい』

7/21/2024, 10:37:03 PM