一瞬の静寂。
目の前に広がるのは一面の青空。
あたまは真っ白。何が起こった…。
確かさっきまでバラエティ番組の撮影で訪れた牧場でおすすめのランチメニューを案内してたような。
「よぉ」
思考の海に落ちようとしてた俺の視界の中によく見知った憎い顔。
それが目の前の青にひょっこり現れた。
「…よぉ」
とりあえず返事しておく。
「おまえ何やってんの?」
上から笑い声が降ってくる。
「それは俺が聞きたい」
ちなみになんか周りが白くてふわふわして身動きもろくに取れませんが?
「これこれ。何かわかる?」
にやにやしながらまぁよくあるあのプレートを出してくる。
「読んでこれ」
「嫌すぎる」
「まぁまぁ読んでよー。じゃないと終わらないじゃん」
さぁさぁ!と促される。
「ど っ き り だ い せ い こ う。はい!おつかれっしたー!!」
投げやりに読む俺に盛大に笑い声が降ってくる。
「冷静すぎお前。そうやってると雪の中に埋まってるみたいで楽しそうよ」
「代わる?」
「やだ」
まぁそうでしょうね!
「はい!!」
勢いよく右手をそいつに差し出す。
なになに?しゃがんで俺の方を覗き込むそいつにさらに手を伸ばす。
「起こしてー」
にやにや。
「やだよ。お前悪い顔してるよ」
「まぁまぁ。いいからいいから」
やらないと終わらないんでしょ?と目で語りかける。
「俺のこと嫌いなのー?」
ここは念を押して。
すると、観念したようにため息を吐いて。
「好きすぎて滅したいぐらいですよー」
俺の手を掴んでくる。
と同時に両手で掴んで力込めて中へ。
勢いよく発泡スチロールの海へ俺に覆い被さるように落ちてくる。
笑いながら力いっぱい抱き止めてやると、
「あーもう、マジぎゅんぎゅんするわー」
上から非難の声が降って来た。
「何だよそれ」
「マジお前滅したい」
お返しと言わんばかりに抱きしめ返される。
ちょっと恨みこもり過ぎてない?痛いよ。
「お前やっぱりクレイジーだわ」
受け止めてやった人に対してのセリフがそれ?
ひどくない?
笑いながら視線を上にやると穴の上からスタッフさんのカンペが出されてるのに気付く。
やば…番組なの忘れてた。
ちょいちょいと目の前のソイツの肩を指先でつついて視線をカンペの方へ誘導する。
お互いに顔を向かい合わせて笑ってそれからお決まりの台詞。
『ドッキリだいせいこーう!!滅!!』
カメラに向かって、最後まできっちり声も揃えて完璧。はい、しゅうりょーう!!
カットが掛かった後、2人して雪に埋まるように脱出に時間が掛かったのは言うまでもない。
マジうらめしい…滅!!
(雪の静寂)
12/17/2025, 4:34:59 PM