妄想の吐き捨て場所

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ウィスタリア、覚えてる?
僕が庭で転んで怪我した時。
君はキッチンで叔母さんに手伝ってもらってクッキーを焼いてたよね。
チョコチップ入りのザクザクしたクッキー。
僕が座り込んで泣くばかりだから慌てて走ってきて出来たてのクッキーを分けてくれたよね。
甘くて美味しかったな。
その後は手を引いて立たせてくれて、僕もケロッとして2人でおやつの時間を楽しんだね。
もしまた食べたいと伝えたら君はまた分けてくれる?

あの後僕たち気軽に会うことが出来なくなったよね。
そう、確かお爺様とお祖母様から君に会うことを禁止されたんだ。
「あいつらは私たちの家を裏切ったのよ!」なんて、笑えるよね。
勝手に裏切られた気になってたのはあいつらだけの癖に。

なぁウィスタリア、君が僕の人生から居なくなってから散々だったんだよ。
だから、だからね、君を見かけたあの日救われる気がしたんだ。
傷ついた僕に甘いクッキーをくれた時みたいに、今の僕も慰めて手を引いてくれるんじゃないかって。

でも助けてもらうには、僕はもうひねくれ過ぎていて。
差し出してくれた君の手を払ってしまった。
(どうせお前に分かるわけない、今まで恵まれて生きてきたお前なんかに。)って、そんな朗らかな君からの救いを望んでいたのは僕なのに。

今だから言える。あの時は手を差し伸べてくれてありがとう。
もういいよ、僕は君無しで立ち上がって生きていくから。
きっと僕たちは再開しない方が良かったんだ、いやいっそ出会わなければ良かったかもしれない。
そしたら僕も君も辛い思いをしなくて良かったのに。

君は救いの女神じゃなかったし、僕は救済される人間になれなかった。
君はただの優しい人間で、僕は人の道を踏み外した文字通り外道だったんだ。

今までありがとう、お幸せに。

9/8/2024, 4:51:11 PM