Rara

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未来



未来都市001号。それが、俺の住んでいる街の名前だ。

浮遊する地盤に立ち並ぶのは特殊素材のクールな家々。そこを飛び回るのは運送用ドローンと浮遊型自動運転自動車。当たり前すぎる、むしろ少し古くさい光景で、未来都市なんていう大層な名前に笑えてくる。なんだか、大型犬の子供にチビと名付けたようなものだと思う。
とにかく、この古くさい未来都市に俺は住んでいる。生まれたときからずっと、この浮遊する都市で生きている。
…浮遊していない本当の地上には、行ったことがない。

ある日、俺は海を見ていた。浮遊都市の端には海がある。円盤状の地盤を囲む水の壁。揺れさざめいてときどき波打ち、見るものの心までも波立たせる海。この街の住民たちは、この壁の外を知らない。本当にここが浮いているのかすら確認する術はない。地球平面説みたいだといつも思う。地球が球形だと誰もが知っているが、平面ではないことを肉眼で確認したものは滅多にいないのだ。

ふと思い立ち、俺は海に身を投げた。
空中浮遊都市の素晴らしい教育により、今までこんな愚行に走ったものはいない。しかし、俺は外の世界が気になって仕方なかった。

海は広かった。無限のごとく続いていた。そして、確かに都市は浮いていた。

海の中、水中に、浮力で浮いていたのだ。

6/18/2024, 7:04:05 AM