光合成

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『巡り逢い』

見つけた、見つけた、見つけた。
やっと貴方を見つけた。
23年ぶりに貴方に逢えた。

あいも変わらず綺麗な黒髪で、線の細い身体があの頃を彷彿とさせる。
少し節の大きいその指が愛おしくて、それの指す先をいつも羨んでいた。
ねぇ、せんせい。私、ずっと待ってたのよ。
ずっと、ずっと、貴方を探してたの。

ふわりと前髪が風にさらわれ瞳が露になる。
色素の薄い宝石みたいな貴方の瞳。
あぁ、嫌だ。その瞳には何を映しているの?
あの頃の貴方はそんな瞳をしていなかったのに。

23年前の私と貴方は先生と生徒の関係だった。
禁断の恋ってやつなのかもしれない。
私は貴方の瞳に、声に、指に、いちいち心を乱された。
その時の先生の瞳は静かな水底に沈んでいるかのように黒く澄んでいて、どこまで飲み込まれそうだった。
光の届かない深海のような瞳と、感情の波を感じさせない穏やかな低い声にどうしようもなく惹かれた。
お気に入りの紺の万年筆を握る細い指先で私に触れて欲しかった。

ねぇ、せんせい。あの頃のせんせいはどこへ行ってしまったの?
私の愛したせんせいはどこ?
こうして巡り逢えたのに、私の愛した人はどこにもいないなんて、あまりにも残酷すぎるんじゃないのかしら。
仕方ないから私が、貴方を、またあの頃のせんせいに戻してあげる。
きっと、これも今、巡り逢えた運命なのね。


2025.04.24
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4/24/2025, 10:16:11 AM