シュグウツキミツ

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透明な羽根

道に何かが落ちていた。よくわからないけど、キラキラと光を反射している。屈んでよく見ると、地面の、周りのアスファルトとは何か違う、光を纏っているような……
指を伸ばしてみると、確かに触れられる。持ち上げて見てみると、透明な……羽根?
向こうが透けて見える。だけど確かにある。輪郭は僅かに歪んで、たしかに何かがあることを示している。大きさは、鴉の風切羽くらい。結構大きい。
空にかざすと青空が透けて見える。
細かな羽一枚一枚の輪郭が光を曲げて、確かにそこにあることを示している。角度を変えても透明だ。

しばらくその透明な羽根を目の前にかざしながら町を歩く。
いつも通っている商店街、パン屋さん、喫茶店、八百屋さん、お茶屋さん、店を閉めたシャッターまで。この透明な羽根を通すと、なんだかキラキラしてるみたいに見える。

あ、と人とぶつかりそうになった。顔の前から羽根を外す。
途端にいつも見る古ぼけた商店街に戻った。クリーニング屋の古い階段、いつのものかわからない美容院の中のポスター、お婆ちゃんしか買いに来ない古びた化粧品屋さん。

「ねえ、香苗、なにその顔の前の」
「いいでしょ、拾ったの。これつけると色んなものがキラキラして見えるんだ」
「へぇ……でもちょっと変だよ。なんでそんなバンドみたいなの頭に付けてまで顔の前に着けてるの?」
「言ったじゃん、キラキラしてんだって。真理恵もつけてみなよ」
「え……えぇ~……私はいいかな……」

11/9/2025, 1:26:55 AM