récit

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むかしむかし、ゾワメムという尊大な魔女が森に住んでいました。
ある日、ゾワメムはたまには人々を笑わせてみたいと思いました。
「そうじゃ、あの落語の話術を身につけて、皆を笑わせてやる」
とゾワメムは思いつきました。
そして名高い落語家のもとに弟子入りすることになったのです。

しかしどの演目をやってもゾワメムの口から出る言葉は、押し付けがましく鬱陶しいものでした。

彼女が寄席に立つと、観客たちは楽しむどころかお腹がいっぱいになってしまうのです。
寄席のあと観客たちは食事が出来なくなるという始末でした。

とうとう師匠は厳しく言いました。
「落語というのは、つまらないことも、話し手によって面白いものになるんだよ。
ゾワメム、あんたの他人をひれ伏せたいと思う偉ぶった性格は落語家に向いてないよ。才能がないから破門だね」

仕方なくゾワメムは江戸前寿司をたらふく食べて森へ帰っていきました。


「つまらないことでも」

8/4/2024, 3:23:46 PM