彗皨

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花にとまる虫に、空気が美味しい自然。
周りを見渡すとほとんどが畑で、懐かしい団地に思い耽る。
足を動かす度に温かいご飯を楽しみにする。
「懐かしい味」に辿り着くまで、もうそう長くはない。


「ただいま」
ガラガラッという音ともに玄関に響く声。

『おかえりなさい。』

何度も聞いたはずの言葉と声が一気に私を安心に包ませた。
何年も前まではハンバーグが目の前にあったはずなのに、今目の前にするのは味噌汁と白米、焼き魚だった。

「いただきます。」
手を合わせて母を見た瞬間茶碗を持って箸を動かした。
『母の味』というやつなのだろうか。飽きるほど食べたはずのご飯は思わず涙が溢れるほど温かく久しぶりの味だった。



田舎に旅をしてみてよかったと、旅路の果てにやってきて思った。

1/31/2024, 5:43:37 PM