悪役令嬢

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『狭い部屋』

目が覚めると、
見知らぬバスルームに閉じ込められていた
悪役令嬢とセバスチャン、魔術師に道化師。

狭い部屋の中央には謎の死体が転がっている。

「この状況知ってますわ。ここからデスゲームが
始まって、一人だけしか生き残れないやつですわ」
「お前の仕業か?オズワルド」
「まさか、違いますよ」

出口は一つだけ。
魔法や物理攻撃を持ってしても
扉はビクともしない。

「😚~♪」
3人が脱出方法を探る傍らで、
道化師が呑気にトランプタワーを積み上げている。

疲れ果てその場にへたり込む悪役令嬢。
「お腹空いたですわ」
「魔法で食料を作れたりできないのか?」
魔術師がチッチッと指を振る。
「セバスチャン、無から生み出せるのならば
それはもう神の領域です」
「😞」

トランプ遊びに飽きて、床をゴロゴロと
転がっていた道化師が突然立ち上がり、
セバスチャンをじーっと見つめた。

「🤔‪。oO(🐺 → 🍖)」
(訳:狼のジビエ料理が食べたいな)

「😳❗️」
(訳:目の前にぴったりの食材があります!)

「😁」
(訳:オマエを食ってやる!)

道化師は目にも留まらぬ速さで
トランプを数枚、セバスチャン目掛けて投げ放つ。

セバスチャンは即座に反応するが、一枚のカードが
彼の頬を掠めて、血がツーッと流れた。
鋭利な刃物の如く切れ味抜群だ。

「何の真似だ」
唸るような低い声を出すセバスチャン。

「🤤🍴」
(訳:ごはん♪ごはん♪)
そんな彼に臆することなく
余裕綽々な態度を取る道化師。

ビリビリと張り詰めた空気が漂い始め、
動揺する悪役令嬢。

「喧嘩はやめてくださいまし!」

すると魔術師が、杖の先端で
道化師の肩をバシッ!と叩いた。
「スタンチク、彼を食べる必要はありませんよ」

「にゃ~、チェシャ猫
う〜ばぁい〜つの登場だにゃ」

丁度のタイミングで、
紫色の猫が壁をすり抜けてやってきた。
両手には大きな配達バッグをぶら下げている。

「ありがとうごいます、チェシャ猫」
どうやら魔術師が呼んだらしい。

彼が注文したのは、ヤンニョムチキン、
キンパ、トッポギ、キムチ、チーズハットグ。

「美味しそうだな」
スパイシーな匂いにつられたのか、部屋の中央に
転がっていた死体がひょいと起き上がる。

「お、お父様?!」
なんと死体の正体は悪役令嬢の父であった。

「伯爵、これは貴方が考えた余興ですか?」
魔術師が尋ねると、お父様は首を縦に振った。
「左様。皆の親睦を深めるために我が
考案したものだ。楽しんでくれたかな?」

「もう、お父様ったら!」
「「………」」
「😋💓」
ぷりぷり怒る悪役令嬢と微妙な表情を
浮かべるセバスチャンと魔術師。
待望のごはんにウッキウキの道化師。

何はともあれ一件落着。
細かいことは置いといて、皆で
仲良くキャンコク料理を食べたのであった。

6/4/2024, 5:45:05 PM