ひのね

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とある男は憂鬱な気分で空を眺めていた。雨は止まず、悶々と何かを考えており、男はそこに佇んでいる理由付けとして、雨を利用しているだけのようだった。つまり悩める場所ならどこでも良かったのだ。日が暮れると、男は建物の中に入っていった。男がつけている炎の他にあかりはなく、中は真っ暗で何も見えない。
しばらく経って、その男――すなわち下人が慌てた様子で外に飛び出してきた。その手には老婆の着物が握られている。再び真っ暗になった羅生門。中から老婆の呻き声が聞こえてくる。
下人の行方は誰も知らない。

#雨に佇む

8/28/2024, 4:41:08 AM