海喑

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大好きな人が、大好きな先輩が、死んだ。
それを知ったのは学校だった。急に全校集会が開かれたと思ったら先輩のクラスの人達は声を上げて泣き、担任は涙を流しながら、警察の事情聴取を受けに学校から出ていくのが見えた。
……そして、そこには先輩の姿はなかった。
嗚呼、そういう事か。私は全てを悟った。
死んだんだ、私の最愛の人は。そうか、そうだったんだ。だってあの時から私は避けられてる気がしていた。
その理由が分かった。
忘れて欲しかったんだ。今からする行為で私を傷つけたくなかったから。
隠してたはずなのに、バレてたんだ。好きだって事。だからこういうことが出来るんだよね。
そうだよね。
……ねぇ、ホントのこと言ってよ。お願い……
そう言ってもあなたはもう言葉は発せない。動くことも出来ない。
私はこれから一人で生きていかなきゃいけないのか。
校長が何か言ってる中私はずっと泣きじゃくっていた。誰よりも。
声を上げて、名前を、聞こえないのは分かっているけれど、声が枯れるまで、叫び続けた。
涙も、声も枯れ果てた時だった。
命の光が消えた貴方から1件のLINEが届いたんだ。
震えた指で通知を押す。すると
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俺の事を最後まで愛してくれた海暗へ。こうやって文面になってしまったけど、言わせてもらう。
海暗の事を。
俺は最初、怖かったんだ。知らない人、それも自分よりも年下の子と仲良くすることなんて。どう接したらいいのか、分かんなかった。だけど時が経つにつれて、慣れていって、普通に話せるようになった。
悩み事を真っ直ぐな目で聞いてくれて、頼んだことはちゃんと成し遂げてくれる。秘密も守ってくれる。
そんな海暗は輝いて見えたんだ。海暗は俺の事を第一に考えるがばかりに体調を崩したり、許しすぎることもあったと思う。だけどそれを笑って許したり、ポジティブに考えられる海暗は
俺にとっての太陽だったと思う。
そんな海暗を
俺という檻に閉じ込めたくないんだ。
月で太陽を隠したくない。
太陽に忘れてもらいたい。

お前に俺という存在を忘れて欲しい。
だから俺は……
なぁ、海暗。最後に約束してくれる?

俺が居なくても、俺以外の誰かの隣で笑っていて。
頼んだよ。

それじゃあ、またいつか。
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枯れたはずの涙がまた流れ落ちてきた。
そんなの無理に決まってるじゃない。あなたのおかげで私は本当に笑うことが出来たのに。
それを別の誰かでやってくれなんて……
でも、貴方が願ったことなら、やるしか無い。
私は流れる涙を拭って、前を向く。
あなたの望んだ私になるために。
あなたの理想になるために。

7/11/2023, 11:46:19 AM