【時を告げる】
私は時計と話せる、いわゆる変わり者だ
今日、時計の友達を何処かに落としてしまった
私は鼻の下に汗の水滴を貯め、1時間程探していた
安い時計に時間と労力をかけるなんてバカだと
分かっているが、私はこの時計に固執していた
だが、あまりの暑さに私は疲れ果てたその時、
母から電話がかかってきた
「時計、家だよ。どうせ今まで探してたんでしょ?」
そうだよ…あぁ、良かった…だけど、
だけど、それ以上に、複雑な気持ちがあると気付いた
「持っていこうか?」
優しい母はそう言ってくれた でも、
「もういいや。今ならまだバイト間に合うし」
当たり前だけど電話越しの母は心底驚いていた
だけど、
本当はもうずっとこうしたかったんだ
多分私は、いつの間にか大人になってしまってたんだ
時計の友達に、別れの時を告げよう
それと、本当は君の声なんて聞こえないんだ
9/6/2023, 11:13:15 AM