喜村

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 微かな風を感じただけで、僕はゆらりと体を動かす。
 ある程度の風が吹かなければ、僕の体から綺麗な音色は出ないけれど。
ヒトは、その音色を聞いて風流だとか言っていた。
 音は出ずとも僕は微かでも風を感じれば、足元を揺らがせる。
 ほら、揺らめく僕の足元を見て、ヒトも
「ちょっとは風あるんだね」
などと会話を始めた。
 ヒトには、この僅かな風を感じることはないのだろうか。
 だとしたら、少しの変化も捉えられる僕は、ヒトより勝っているのかもしれない。
 風を感じて軒先で僕は小さく揺れていた。

--チリン、リン……


【風を感じて】

8/9/2025, 11:25:07 AM