【お題】君と見上げる月...🌙
君に無理を言って、高天原の皆には内緒で月を見に地上に降りた。
「バレたらブチギレられるの俺なんだが」
とか、
「とんでもないお転婆姫様だ」
なんて君はボヤいていたけれども、最近の事で何か思うことがあったのか。皆にバレない様に私を隠して地上に連れて行ってくれた。
初めて見る地上の景色
初めて見る地上に住む人々
初めて見る鳥や魚
初めて見る普段の君の姿
何もかもが新鮮で、何もかもが羨ましかった。
夜になって、2人だけで月が下で良く見える場所に座った。
とても綺麗だった。
初めて見る下から見た月(弟)も
隣で座って、静かに盃を傾ける君も
昼間見た真新しい景色以上に新鮮で、とても綺麗だった。
「また、一緒に月を見上げてくれる?」
と聞いたら、片目だけこっちを見て
「お前(私)が望んだら、まあ、考えなくは無いな」
と言ってくれた。
皆、君の事を良く思ってない様だが、
やっぱり、君は優しい神の一柱なのだと思う。
「じゃあ、また近い内にお願いしようかな」
「勘弁してくれ。頻繁だと流石にバレる。バレてキレられるのはお前じゃなくて俺なんだぞ」
と、少し気が滅入った様に君は言った。
「でも貴方は私の次位には強いじゃない」
「当たり前だ。【天】を持つ神が弱くてどうする」
と半眼になりながら私を横目で見た後
「そう言う問題じゃない。奴らにとっちゃ、俺は気に入らない存在でしかないからな」
と、鼻で笑った。
「そう言う問題なのかしら?」
「そう言う問題なのさ」
と君は言って
「さて、そろそろ戻らないと、居ない事がバレそうだ。帰るぞ」
と言って手を差し出した。
「・・・・・もう少しダメ?」
「言っただろ、アイツらにキレられるのは俺なんだぞ・・・・・」
と飽きれた口調で言う。
「わかったわ・・・・・」
「ちゃんと、また月を見に付き合うから不貞腐れるな」
と、君は苦笑いしながら言った。
でも、その約束は君が私に首を差し出した事で、
コレが、最初で最後の、君と見上げる月になった。
By 【天】を持つ女神と神の、女神の話より
9/14/2025, 3:02:33 PM