「虚無、混沌、黄昏、冥府。なんなら二重属性。
『光と闇の狭間』なんて、設定付与し放題よな」
個人的には某怪物狩人の「胡麻ちゃん」が好き。
某所在住物書きは大きなため息ひとつ吐いて、昔々のゲームなどプレイしている。
光と闇。狭間。去年はこのお題で何を書いたか。
「……ところで光と闇の『狭間』って、何だろな」
ポツリ。物書きが呟く。
朝と夜なら夕暮れであろう。分かる。
ならば、二項対立に見えなくもない光と闇は?
――――――
11月30日から続いている一連の物語も、ようやくクライマックス。エンディングまであと1話。
まず、伏線設置パートとして、最近最近の都内某所。「明日」投稿分のお題回収役を後輩、もとい高葉井といい、グループチャットのメッセージによって、開店前の某喫茶店に呼び出されていた。
店内は何があったやら、完全に大騒動の後。
誰かがあちこち物色して、破壊して、金銭を取らずに撤収した結果としての散らかり具合。
「ごめんなさいね。気にしないで」
店主は大騒動にもかかわらず、平然としている。
「10月25日の大食いチャレンジで差し上げたランタン、持ってきてくれたかしら?」
「10月25日」とは過去作投稿分の日付のこと。
スワイプが面倒なので、気にしてはならぬ。
高葉井は先々月、ここの大食いチャレンジの景品として獲得した、いわゆる「鉱石ランタン」と呼ばれているアンティークを、2個差し出す。
「ありがとう。一旦、こちらだけ借りるわね」
店主は透明な月のチャームの付いている方を受け取り、高葉井に少し待っているよう指示。
「すぐ、帰ってくるわ」
『Staff Only』の扉へ消えていった。
――場面は変わり、時間も少し戻って、すなわち前回投稿分から直通のおはなし。
「光と闇の狭間」の厨二ちっくフィクションなお題に相応しい、「世界線管理局」なるファンタジーな職場は、まさしく混乱の真っ只中。
管理局に収容・収蔵されている「光のランタン:レプリカ」が、悪しき敵性組織に奪われた。
なんで? そのランタン、チートアイテムなのだ。
ナンデ? 要はお題のせいなのだ。
「ここ」ではないどこか、既に滅んだ世界で、「『光』という概念」が人々から吸収・受け取った信仰、想像、設定が、鉱石内包するランタンの形をとって結晶化したもの、その模造品の、
収蔵場所、セキュリティの抜け方がバレた。
敵性組織にリークしたのは彼等の同僚。
過去作11月2日投稿分までさかのぼる、「ウサギ」のビジネスネームを持つ管理局員。
再度明記する。スワイプが面倒である。
「これが光のランタン、『レプリカ』だって?!
十分じゃねぇか!アハハハ!!」
厨二ちっくファンタジーのお題に従い、光のランタン:レプリカは、己の内包する鉱石の魔力により管理局内の「光」を上書きする。
「これからは俺達が全世界線の支配者だ!」
あちらの陽光には炎が代入され、そちらの天井照明からの人工光は鋼の針に書き換わる。
すなわち窓辺には業火あたる陽だまり。
天井のライトは周囲に鋭利な針の雨をばらまく。
「非戦闘局員は敵襲訓練どおり、シェルターへ!」
受付係の局員が、経理部はじめ従業員を誘導する。
「慌てないで!押さないように!」
鳥頭め。何をそんなに苦戦しているのだ!最後の非戦闘員を送り出した犬耳の女性が振り返ると、
局員避難の時間稼ぎと敵性対象捕縛のため、法務部執行課実動班、「ツバメ」と「ルリビタキ」が、飛んで跳ねての激戦を繰り広げている。
「畜生、あの馬鹿ウサギ!」
小さなペンで業火や針の雨を「ただの光」に常時書き直しながら、タバコの香りする「ルリビタキ」が、現在独房に収容中のリーク者を罵倒した。
「光」が制服の端を焼き、「光」が袖を引き裂く。
「書き直し」が可能な「助言者の校生ペン:イミテーション」をもってしても、所詮、彼のそれはオリジナルに比べれば粗悪品。レプリカにすら劣る。
「どうする、どうすれば……!」
と、そろそろお題回収。
伏線設置パートの老淑女、喫茶店の店主がさっそうと現れて、月のチャームが揺れるランタンを、
毅然とかかげると、そのランタンから闇があふれ、
光のランタン:レプリカの光とぶつかり、
光と闇の狭間で火花が数秒爆発して、パキン。
敵性人物の手にあるランタンが、音をたて壊れた。
「闇のランタン:オリジナル」
老淑女が朗々と、己の持ち物の名を紹介した。
「あなたが私の『収蔵庫』……お店を荒らして、結局見つけられなかったものの、『本物』よ」
残念だったわね。信頼できるお客様に預けていたの。淑女は穏やかに笑い、自分の仕事が終わったので、扉に手をかけ去っていく。
「私は世界線管理局、収蔵品保護課のアンゴラ」
法務部によって拘束される――しかし暴れる敵性人物に、店主が笑って、手を振った。
「私の収蔵庫修理の請求書は、後で郵送するわ」
パタン。扉が閉まる。
「光と闇の狭間で」のお題は無事回収され、管理局内はようやく、静寂と平和を取り戻した。
12/3/2024, 3:31:46 AM