@grk1365126

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【たとえ間違いだったとしても】

 何も間違ってはいないさ、と嘯いたあなたに、わたしは何も答えなかった。ひとことでも言葉を発したら、抱きしめた体が離れていく気がしたからだ。
 鼻先をうずめれば澄んだ香りがして、ああ、あなたはこんな香りがするのだと、服の端を強く掴む。手触りの良い生地も、その一枚隔てた先にある肌の温度も、知ろうとすればいつだって知ることができたはずだった。それをしなかったのはわたしの過ちだ。こんな時になってようやくあなたを知ろうとしたわたしの、一番の過ちだった。
 何も間違っていない、とあなたは言った。それこそが間違いみたいなあなたの慰めに、わたしは、それでもいいやと小さく泣く。あなたはそう言うけれど、わたしは、もう、何もかも間違っていても、それで良かった。

4/22/2024, 11:16:07 AM