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 夕闇に囲まれた小さな公園のブランコ。そこに腰掛け、ゆらり、ゆらりとブランコを漕ぎ俯いている青年がいた。青年は闇に溶け込むような黒いパーカーと藍色のズボン、そしてスニーカーを履いており、このような場所にいることが不自然に感じられる。そこへ、ギラリと琥珀色の瞳を光らせながら黒猫がやってきた。黒猫は青年の足元に辿り着くと、可愛らしく「ニャー」と鳴く。その時、今まで俯いていた青年が黒猫へ話しかけ始めた。
「お、ようやっとお出ましか。ん?何だ、猫の姿じゃないのかって?そりゃあお前、どうせこれからあっちに行くんだ。その姿じゃめんどうだろぉ」
 青年はニヤリと笑ったかと思うと、いきなりブランコから腰を上げ、腕に隠れていたブレスレットに手をかざした。
「それじゃあ、夜市へ行きましょうかね。ほら、お前もこっち来い」
青年は、いつの間にやら黒猫と同じような琥珀色の目をしており、腰からは尻尾が二本生えていた。もう常闇に包まれた公園で、黒猫を腕に乗せると同時に突風が起こる。気づけば、ただ風がブランコを揺らしているだけで、そこには誰も居なかった。いや、何も残されていなかった。

2/1/2024, 1:50:51 PM