6.月夜
先ほど見た月夜は綺麗だった。なんの淀みもなく、真っ黄色でとても美しい。月は私たちに素の自分を晒している。それに対して、私は自分の意見を表に出さず、自己中心的な心が腐った人間だ。月を見ると何故か勝手に嫉妬してしまう。こんなに完璧な物体が私の近くにあればその存在を羨ましく思ってしまうではないか。そんな私と全く持って対照的な月は、物理的距離的でなく、存在的も遠いということは言うまでも無い。月に照らされた私は慰められることもなく、丸い球体を憎んでいた。しかし、月は私のことを気にも止めず、ひたすら完璧な姿を維持し続けている。日によって欠けようが、時が経てば完璧に戻る月が私は羨ましかった。そんな月を見て、自分の不甲斐なさを自覚しつつ、心を落ち着かせて眠ることにした。
3/8/2024, 9:41:16 AM