ドルニエ

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 自分で選びたかったのさ。リュートを背負った青年は杖をくるりと回した。不便だろ、と問うと、まあね――と彼は椅子に収まり、水出しはありますか、とウェイターに訊いて、数度のやり取りの末にじゃあそれで、と話を締めた。
 だからって自分で潰すことはないだろう、と言うと、そうだったかもね、となんてことのないように彼は応えた。ただ、おかげでつまらないことを訊かれないし、好き勝手言ってもあんまり怒られないよ、今は昔より歩きやすいしね、と続けた。それにしたって、と思う。あまりにつり合わないじゃないか。
 まあ観念的というか、得手勝手な言い草だろ、澄みきった瞳って。だから潰したのさ、俺は。それにさ。そう言って彼はサングラスを外す。初めて見たわけじゃないけど、やっぱり怖い。
 ――本当は見える、って言ったら君はどうする?

7/30/2023, 11:18:25 AM