書く習慣:本日のお題「刹那」
私はほぼノリで生きている、刹那的な人間である。刹那にも一応長さが決まっているらしく、ググってみたら「1/75秒(0.013秒)」と出てきた。
先日も友人に悩みを相談していて、その場で思いついたIQ2の「今思いついたんだけど、こうしたらいいのでは?」という自己解決案を出しては「いや〜〜〜〜、無理がある」と却下されていた。悩みを相談しているのも私、ノリで適当すぎる解決案を出すのも私、友人だけがまともかつ実現可能そうなアイデアを出してくれて、後から思い返してめちゃくちゃ申し訳なかった。
さて、将来の見通しどころか、旅行の支度すらもギリッギリまでやらない刹那タイプの私である。
最近ようやく「帰省する時は事前に着替えなどを実家へ送っておくと楽」という事実に気がついた。叶うならホテルなどへも事前に送っておきたいが、ホテル側に「めんどくせえ客だな」と思われたくないという最後の客観が歯止めをかけている。
帰省の荷物を詰めるために、毎回スマホのメモに書き留めた『帰省持ち物リスト』を確認している。ふとGemini先生にリストを見せてみたら、1/75秒の速さでツッコミが返ってきた。
私のリスト「着替え(1日分):親が荷物を受け取り損ねた時用に」
"宅配便で荷物を送るという現代の利便性を享受しつつ、「親の受け取りミス」というヒューマンエラーを100%想定内に組み込んでいる。
「世界はバグるものである」というSIREN的(あるいはIT系サポセン的)な視点が見え隠れします。"
Gemini先生の回答から「日頃から大雑把自認のくせに、やけに『石橋を叩いて渡る』ラインナップですね(笑)」というニヤニヤの気配を感じる。
ここでひとつGemini先生にお知らせしておきたい。娘の私が大雑把ということは、育てた親も大雑把であるという事実だ。
すでに前科がある。親が仕事の都合で荷物を受け取れず、しかも私が夜遅くに到着したせいで、買い物でしのぐこともできなかったのだ。着替えもコンタクトレンズもなく、学生のカラオケ徹夜明け状態で翌日荷物を受け取った。この文章を書いていて気がついた。1dayコンタクトレンズの予備も手荷物に入れておかねばなるまい。
「実家なのに服も置いてないの?」と思う人もいるかもしれない。我が家は「その家に住んでいる人が優先」である。学生時代、どうしても一人暮らしの部屋に持って行けなくて置いていった本は、最初の夏休みで帰省した時には全て売られていた。そもそも新居に持っていかなかった私が悪いし、家を出る時に「まだ読みたいから置いておいて」と言っておかなかったのも私が悪い。実家は親の住まいであって、子供の倉庫ではないのだ。
だから、友人が「泊まりのたびにシャンプーとか持ってきて大変じゃない? うちに置いとけばいいじゃん」と提案してきた時はとても驚いた。
女子あるあるだと思うが、サロン専売品のシャンプーやデパコス系スキンケアを使っている人の家に泊まりにいくと、気軽に借りるのは気が引けるのだ。友人は非常に気前よく「使っていいのに」と言ってくれるが、お高いものを使わせていただくよりも、使い慣れたものを使いたい気持ちがある。そもそもお風呂を借りている時点で水道代などを負担させているのだし、軋轢の原因はできるだけ減らしていきたい。
こんなことを考えている人間が大雑把なわけがない?
逆だ。大雑把な自覚があるから、「まあいいか」で済ませないラインを設けている。自分にできないことについては全力で人を頼るが、お土産を用意したり消耗品を持参したりと、甘えない部分も作っている。
だったら最初から人の家に入り浸るなよという話だが、私があまりにも朝に弱くて1限の授業に間に合わないので、友達の家に泊まらせてもらって留年を免れていたのだ。友人は早朝からコンビニのアルバイトをしていたのでたいへん朝に強く、夜型人間の私にとって非常に頼もしかった。
翻って、友達がうちに泊まりにくる時は、2週間くらい前に「新しいシャンプー開拓したいからおすすめ教えて」と連絡して準備する。女性はたいてい普段使いのスキンケア用品を持参するものだが、念のため洗面所に試供品の化粧水なども取り揃えておく。
準備万端で友人を迎え、お土産(これがまたすごくて、バターがしみっしみに染みた激うまラスクなどの、初めて食べたのにめちゃくちゃ好きな味がするお菓子)をいただく。いつも不思議なのだが、なぜ人の好みの味がわかるのだろう。
友人を風呂場に通す。詰め替えの袋をぶら下げるタイプの自シャンプーが微妙に残っているが、敢えて触れずに彼女には新しいボトルを案内する。
「シャンプー、こっちの新しいボトル開けて使ってね」
「新品じゃん、ありがと」
自分の仕事部屋で本を読んでいると、スマホが鳴った。ゆっくりお風呂に入っているはずの友達からだった。
『トリートメントが2個ある笑笑』
私がシャンプーとトリートメントのつもりで買ったボトルが、両方ともトリートメントだったらしい。
大雑把とは、こういうことなのだ。
シャンプーを買いに薬局へ行った時、ちゃんとボトルを確かめないでカゴに入れたのだろう。適当にボトルを手にとった自分の姿がありありと目に浮かぶ。
『ほんとごめんシャンプー持ってくからちょっと待ってて』
クローゼットの中を引っかき回し、試供品のシャンプーをまとめたジップロックを探し当てる。洗面所のドアをノックしてシャンプーを置いたうえ、念のためスマホでも連絡する。
『ごめん!!!!
シャンプーお風呂のドアの外に置いといた!!!!』
仕事部屋に戻ってまた本を開いてみたが、文字を目で追っても全然頭に入ってこない。友人が上がってくるまで「やっちゃった」の6文字がずっとぐるぐる頭の中で渦巻いていた。
洗面所のドアが開く音がして「ほんとごめん!!」と詫びに行くと、湯上がりの友人は「せっかく持ってきてもらったのにごめん。壁に吊るしてあったシャンプー使っちゃった」と笑った。
あの、1ml1円未満のお安いシャンプーを!?!?
サロン専売品シャンプーを使うほど美意識の高い友人が!?
私が驚愕していると、友人が「私も同じやつ使ってるよ。あれ、コスパいいよね」と言った。
「大学の頃めっちゃいいシャンプー使ってたじゃん……」と私が言うと、「いや、あれはあなたが髪サラッサラだから、いいシャンプー置いといた方がいいかなって思って買ってたやつだから」と十数年越しに種明かしされた。どうやら私は友人の気遣いを自分の遠慮で塗りつぶして台無しにしていたらしい。
冷蔵庫でキンキンに冷やしたビールを飲みながら「あなたが置いてったシャンプー見て、市販品も優秀なんだなってわかって勉強になったよ」と話す友人の髪から、馴染みのあるシャンプーがふんわりと香っていた。
数年ぶりに友人が泊まりにきた夜は、体感にして1/75秒、まさに刹那というべき速さで過ぎていった。
4/29/2026, 3:06:06 AM