霜月 朔(創作)

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終わり、また初まる、


冷たい雨が降る夜に、
私達はお互いを支える様に、
立っていました。
世界が終わりを迎えるのを、
空から眺めているかのように、
静かに、穏やかに。

心の底まで染みる、冷たい風。
それでも貴方の指は、
とても温かくて。
「行きましょう。」
私が微笑みながら囁くと、
貴方は頷いてくれました。

凍るような青い月の下。
私達は深く沈んでいくのです。
光も音も届かぬ場所へ。
二人だけの、最後の楽園へ。

赤い花が散るように、
生と死の匂いが漂う中で、
私がそっと貴方の名を呼ぶと、
貴方は、ただ微笑んでくれました。
この世の終わりを知らせる様に。

目を閉じると、
時間が溶けていきます。
痛みも、苦しみも、全て流れ、
揺らいで消えていきます。

でも。
私は知っています。
――これは、
終わりではないことを。

漆黒の闇が、優しく、
私達を包み込みます。
私達は一つになり、
再び生まれるのです。
この深い闇の何処かに。

そう。私達は…。
終わり、また始まるのです。

貴方は私の全て。
私は貴方の全て。
だから…。
私だけを見ていてくださいね。


3/13/2025, 6:38:33 AM