【十五夜】
2008/09/14
晋也がススキを持ってお見舞いに来てくれた。
「ここに置いとけば月見できるだろ?」って。
そしたら母さんまでススキを持ってきたもんだから、笑っちゃった。
なんか、こうやっていろんな人と笑えるって良いな。
入院生活も、案外悪くないかもしれない。
2009/10/03
遥と海愛がススキを持ってお見舞いに来てくれた。
そういえば、去年は晋也が持ってきてくれたな。
あの時は母さんもススキを持ってきたもんだから、みんなで腹を抱えて笑ったっけ。
今年の中秋の名月は遅めだ。
「ほら、ついでにカボチャのランタンも持ってきたよ」って、先取りハロウィンまでしちゃって。
笑いながら、「次は無いな」と思った。
2010/9/22
誰もススキをもってくることはない。
それもそのはず、面会謝絶を要求したからだ。
母さんも、妻も、娘も、友達も、「もうくるな」と突き放した。
だから、来るわけない。
でも、「面会謝絶なんかまもってられるか」と言って、ドアを蹴破ってやってきてほしいと考える自分もいる。
手にはススキが握られていて、「はやく元気になってね」って言って笑顔を見せるのだ。
ああ、なんで突き放したんだろう。
結局自分が孤独になるだけなのに。
やっぱり僕はバカだ。
もう、消えてしまいたい。
11/10/2024, 11:43:42 AM