一人の子

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小学校に入ってはじめての夏、親戚全員で動物園に行った。
物心ついて初めての動物園だったから記憶に残っているのは
ほんの少しだけ。

大きなドームの中には植物と鳥の世界が広がっていて
ディズニーの世界に入り込んだかのようだった。

その動物園の1番人気は白熊で穴の開けられた壁から
たまにひょっこり顔を覗かせるお茶目でかわいい男の子。
飼育員さんとも中が良く見ていて楽しかった

私が行った時は
たまたまその白熊の誕生日で大きな氷のケーキを
美味しそうに食べていた。
「冷たくないのかな」、「頭ガンガンしないの?」など
その時の私は全てにおいて質問をしたい年頃だった。

園を周りきり最後によったお土産売り場で20cmほどの
白熊のぬいぐるみを買った。
動物園に行った日は実家で飼っている犬を連れて行って
預けていたため、犬を迎えに行って車に乗せ
車が走り出して30分ほどたった山道で車酔いをしたのか
犬が嘔吐した。

父と母が犬を乗せていた後部座席を掃除してる間
姉と従姉妹と3人でその日買った
ぬいぐるみの名前を決めていた。

姉と従姉妹がなんのぬいぐるみを買って
なんて名前をつけたかは覚えていない。

でも
私はその車の中で白熊のぬいぐるみに[ナナ]と名前を付けた。

そこからはナナと毎日一緒にいた。
学年が上がるにつれて私の体は大きくなり
ナナは汚れていった。
買った時には腕いっぱいに抱いていたのに
中学3年生の時には片腕に治まるほどになっていた。

あの日から私はナナの名前を忘れたことは無い。
高校に入ってから白熊マニアの私はナナと同じ
メーカーの白熊ぬいぐるみを全部買って
白熊オタクという名称を自分の中で掲げた。

それは社会人になった今でも続いている。

2/14/2024, 9:51:39 AM