ノブメ

Open App

365日(とプラス1日)、世界の何処かで誰かが主役になれる。
それは誰しもに平等に与えられた権利だ。
だけど、私にはそれが与えられなかった。

あの日、私達の国は粉々になった。
お父さんとお兄ちゃんは、私達を守って火の海に散った。

怪獣は何処かの国が退治してくれて、私達はなんとか生き残る事が出来た。
だけど、あの日は私達の国にとって悲しい日になった。

ゆく年くる年、どこにも行き場のない悲しみと憎しみが、私の国を覆い尽くす。

小さい頃は、それは特別な権利なんだと思ってた。
幼稚園で私だけがお祝いされていない日があることに、おめでたい私は気がつかなかった。

でも、私は他の子よりも早く賢くなってしまった。それが誰しもに与えられた権利で、自分にだけ与えられていない事に気がついた。
私は賢かったから、その訳を誰にも聞かなかった。

今夜、私はいつもと同じ小さな部屋で、テーブルの上に写真立てを3枚並べ、仕事帰りに買ったショコラケーキに蝋燭を立てて火を灯す。

一年に一度の素敵な夜。

Happy Birthday to 私。

「−特別な夜−」

1/21/2023, 4:02:59 PM