忘れられない、いつまでも
二十歳のときに、父がくも膜下出血でなくなった。
体調が悪かった父は、自宅で休んでいた。布団に寝ていた父が、苦しそうにしていることに母が気付き、救急車を呼んだ。炬燵に転がっていた私は、父のもとへとんでいった。呼吸の仕方がわからないのか、ちゃんと息を吸えていなかった。口元が歪み、表情も歪んでいった。父をコチラへ呼び戻さなくてはと思い、脳に響くように『お父さん』と何度も呼んだ。救急車が到着する前に、一度コチラに戻って来た。
救急車には母が乗り、私はもうすぐ帰ってくる姉を待って、病院にかけつけた。
心拍数が0と表示されていた。
父の急変時に外出していた姉は、『お父さん』と何度も呼んだが、父の苦しそうな顔を 見ていた私は、また苦しめたくなくて呼ばなかった。現実逃避していたのか、人はこうして亡くなるのかと、変に冷静な私がいた。
当たり前にそばにいた人でも、目の前からいなくなることを思い知った。
5/10/2023, 10:18:40 AM