「白燐さんって、なんで俺のことわざわざ引き取ったんですか?」
晩酌。今日は年にだいたい数回だけあるふたりだけの時間。
いつもより奮発して、少しだけでいい酒と肴で机を囲った。
なんでもない日にこんなことをするのは滅多にないから、ついペースがはやくなって、その分はやく酔いが回っていた。
「なんでっていわれても…なんだろう……なんとなく?」
「ひどぉい!もっとかっこいい理由があるのかと思って損したぁ!」
そう言って喉を鳴らして笑いながら、彼はまたコップの中の酒を一口飲む。白い喉が上下に動いていた。
目の前に座る彼の伸びた髪に身長、いつの間にか声変わりを迎えて少し低くなった声、豊かになった感情表現に言葉。
長いようであっという間。
この子も成長したなぁ、と感慨深くなる。
これが親の気持ちってやつか、と実感し始めたのはいつ頃だったろうか。
この子を引き取った時から、この子が「友達と遊んでくる」と初めて言った時から、この子が小さな子供を拾ってくるようになったときから。
思い返せば、色々あった。
「なんですか、そんなに俺のこと見つめて」
えっち、といたずらげに瞳を細めて笑いながら言われたから「別に何も無いですよぉ…まだやっぱガキだなぁと」
「ガキって…俺一応宇宙と同じくらいの歳行ってますからね?」
幼稚なようで中身のない言葉を交わしながら、また酒を飲む。
こうなることも、最初から決まっていたのかもしれない。
8/7/2024, 1:02:45 PM