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「もしもし、そこのお姉さん」繁華街の眩さに慣れてしまうと、建物同士の間──せまい路地裏なんかは、バックヤードから漏れる程度の明かりしかない。雨が降り光が曖昧に反射する地面の先、とくに暗く見えるそこに、濡れねずみになった男がいた。道路に面した明るいこちら側と、男が座り込んでいる影の混ざり合ったそこは、対極に思えた。僅かに当たる明かりが、男のひどく美しく整った恐ろしさすら感じる容貌を照らしている。「おれを一度拾ってみてくれないかな」


// 光と闇の狭間で

12/3/2022, 7:42:17 AM