-ゆずぽんず-

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趣味も恋も仕事も、なにか理由や動機であったり自分を動かす何かきっかけがなければ成り立たないだろう。魚が好きで、捌いて料理をして美味しく頂くという一連の流れが好きだからと魚釣りをする人もいれば、単純にファイトをしたいからとルアーフィッシングやジギングを楽しむ人もいる。好きな曲を好きな音色で奏でたいから、楽器を演奏して音楽を楽しむ人もいる。人の笑顔に幸せを感じるから、お笑い芸人になる人もいる。小さな特別を感じて欲しいからパディシエになる人もいる。あの人のことが大好きで独り占めしたくて、誰にも渡したくないからと自分の気持ちに愚直に恋に走る人もいる。
何かをする時、そこには大小様々な気持ちや想いが存在している。堪えきれないような悲痛の叫びを胸に秘めている人もいれば、何者かになってやるんだとハングリー精神旺盛に心を滾らせる人もいる。そして、これらの心の声というのは本人にしか分からず本人でしか処理できないものである。他人が干渉できるものでは無い。寄り添うことは出来ても、その人の気持ちや想いを汲むことは出来ない。、その人の心に触れることはできない。しかしながら、人というのは実に分かり易くい。それでいて掴みどころのない不思議な生き物だ。本人でさえ、心の内を理解していないことがある。己の本音を知らず、自分自信を追い込み傷つけることがある。かと思えば、意図せずして自身の心を軽くすることもある。繊細故に盲目的なところがある実に複雑な生き物である。
人が自らの想い気持ちに触れるのはどのような時だろうか。突然にして漠然と「あれがしたい。これがしたい」と思い立ったり、「あの人のことが好きかもしれない」と恋に鼓動を早くしてみたり。これらはいつだって、自分自身でさえ気がついていなかったその物事や人に対する想いや気持ちが少しずつ蓄積した結果に、表面張力を打ち破って溢れ出した時では無いだろうか。これはあくまでも私の考え方にすぎないが、物事というのは深く考えれば考えるほどに曖昧になっていくものだ。 同じものを見続けた時にゲシュタルトが崩壊するが、気持ちや想いというのも焦点を当てて見つめ続けていると却って理解できなくなるものである。人は無自覚無意識のうちに、溢れ出た心の音に素直に従って生きている。想いが張り詰めている時というのは、表面が湾曲しているために輪郭は歪み、透けて見えるものを屈折させ、より不可解にしている。しかしそれが溢れ出た時、先程までの不鮮明で不可解だったものが透き通って鮮明に見えるのである。人が衝動的に何かをしたくなったり、突然恋に落ちたりするのはこうした時なのだろう。寡黙で温厚な友人や知人は、
普段であれば声を荒らげることはないが些細なきっかけで見たことがないほど激怒したりする。少しの毒も吐かぬ優しい同僚が、先方との電話を終えるや否や罵詈雑言を口にする。
人という生き物は、基本的には倫理観といあとのを持ち合わせておりそれぞれの理性でもって自分自身をコントロールしている。ところが、これらが機能しない時には暴走といあ結果を招くのだが結末というのはその事象により様々である。日々抑え込んでいた怒りや憎しみが爆発して、大きく強い口調で罵り罵倒する。友人同士であったが、好きという気持ちに嘘つけず突発的に好意を叫ぶ。周りに合わせて取り繕い、嫌いなものや嫌いな人を好きなふりで誤魔化してきたが耐えられなくなってことは間を選ばず思いのままに本音をぶつける。理性や倫理観というのは万能ではない。人は物事を深く考えることの出来る能力を持っているが、そのために要らぬ気配りや忖度といった無駄なことにまで思考を巡らせる。もちろん犯罪行為や迷惑行為、公序良俗に反する行いを起こさない人は至極冷静で物事を客観的に捉えることが出来る。自らの言行が及ぼす影響を深く考え行動することが出来るが、己を強く律しすぎる事で縛りつけていることがある。本当にやりたいことでさえ、人に気を遣い遠慮して萎縮してしまって何も出来ない。そうして様々な気持ちを胸の内にしまい込んでしまう。それがいつか火山のように爆発的に飛び出して、見たこともないような行動力に繋がることがあるだろ。川のように強く激しくなった流れを抑えきれず溢れ出した時、ふと冷静になってつまらない忖度や遠慮を流しさって新しい自分に出会えるだろう。
人は常に多かれ少なかれ、数え切れないほどの感情の起伏を繰り返す。いつどこで、どのように抱いた気持ちも胸にしまい込むことで場を繕う。人の行動力の源は、その強い思いや動機といった目的あっての考えであったりする。しかし、そのどれもは実は誰にでもある胸の内にあって見えない樽から溢れ出た気持ちなのではないだろうか。誤魔化して、無視してきたことで見えなくなっていた自分自身の本当の姿であって素直で曇りのない心の声では無いだろうか。

溢れる気持ちは、自分自身を映し出す鏡のように嘘偽りのないものだろう。

2/5/2023, 10:39:36 AM