「天国ってあると思う?」
フェンス越しに君が言う。あの時、僕は死のうとしたんだ。それなのに…。今日も君のお節介のせいで、僕は酸素を消費する。
「一緒に帰ろう。」
あの日から、君は僕に付き纏ってくる。無視しても、君は変わらずに僕の横に来る。断り切きれず結局今日も一緒に帰った。帰路を歩きながら、僕は君に聞いた。
「何で、僕を助けたんだよ。」
「逆に何で死のうと思ったんだ?」
僕の問いに問いで返してきた。文句を言う気力もなかったから、誰にも言った事のない本音を話をした。
「見て欲しかったんだ、両親に。どれだけ頑張っても二人の世界に僕は居ないかった。だから、死んだら見て貰えると思ったんだよ。馬鹿だよな。」
「そうだったんだな。お前はよく頑張ってるよ。」
僕はその言葉を聞いて、泣いた。認められた気がした。涙が止まり、再度同じ質問をする。今度は答えてくれた。
「俺、病気で死ぬんだ。生きたくても無理なんだ。だからムカついた。勝手に終わらそうとするお前を見て。」
僕は言葉を失った。君にそんな事情があったなんて。僕は自分の悩みの小ささを思い知った。
「ごめん。」
精一杯出した声は風に飛ばされそうだった。
「気にすんなよ。ただ一つお願いがあるんだ。いいか?」
何だろうと思いながら、僕は頷いた。
「俺、友達居ないからさ、時々墓参りに来てくれよ。」
切ない願いに胸が苦しくなる。僕は下手に笑って言った。
「もちろん。友達だからな。」
君は笑った。嬉しそうな泣きそうな笑顔だった。
僕は君の墓の前に居る。手にはローダンセの花束。毎月持って来ては、最近あった小話をする。今日も話し終え、帰ろうとした。その時、僕の目に君が映んだ。僕は君に向かって、笑顔で言った。
「君に出逢えてよかった。君のお陰で僕は今日も息ができる。ありがとう、僕の最高の友達。」
風が揺れる。君の笑い声が耳に届いた。
5/5/2024, 12:34:55 PM