せつか

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その視線の先に誰がいるのか、そしてその視線にどんな意味があるのか、誰もが気付いていたと思います。
いえ、そういった心の機微が分からない者もいたかも知れません。けれどそれはまだ年若い、自分の栄達と野心に燃えている者特有の視野狭窄によるものでしょう。いずれ彼等も気付いたのではないかと思います。

その視線の意味に気付いた者達はみな一様に苦悩しました。男も、女も。
彼に憧れ、彼に恋をし、彼に心を奪われた者すべてが、その日自分の一部が欠けてしまったことを思い知らされたのです。彼を憎むことが出来たらどんなに良かったか。憎むことも、恨むことも、忘れることも出来ないからこそ、彼自身だけでなく全てのものが苦しんだのでした。

結末は、ご存知の通りです。

残ったのは、焦土と化した王国でした。


END


「視線の先には」

7/19/2024, 3:18:02 PM