マグカップ
ずっとずっと、片思い。
そんな事、
初めから分かってたのに。
たまの休日。
一人、街を彷徨い、
孤独な心を誤魔化すように、
飛び込んだカフェ。
虚ろな気持ちを隠して、
カフェラテなんか注文して。
充実した休日を、演出してみる。
マグカップの上には、
カフェラテに描かれた、
今の俺には、余りに似合わない、
ハート柄のラテアート。
見なかった振りをして、
褐色の湖面に浮かぶ、
恋の象徴を崩すように、
カフェラテを口にする。
マグカップの、
少し柔らかい口触り。
エスプレッソの鋭い苦みと、
フォームミルクの偽善な柔らかさが、
俺の心を掻き乱す。
今頃、先輩は、
華奢なティーカップに淹れられた、
香り高い真紅の紅茶を手に、
恋人と語り合って居るんだろう。
口触りも繊細な、
ティーカップとは違って、
マグカップは無骨だけど。
孤独に震える俺の心を、
そっと受け止めてくれる。
そんな気がして。
静かにマグカップを、
両の手で包み込む。
マグカップ越しに伝わる温もりが、
傷付いた俺の心を、
ほんの少しだけ、
癒やしてくれた気がした。
6/16/2025, 6:15:32 AM