あのひとはあたしのお気に入り
年齢よりずっと若い顔も
寝癖だらけの髪も
毎日同じ柄の服も
うたをうたう声も
あのひとの気に入ってるものも
全部があたしのお気に入り
あのひとが勧めていた本は全部読んだ
あのひとのお話はどれもまじめに聞いた
あのひとが苦手だっていうから
あたしは目玉焼きを嫌いになった
あの人はあたしのお気に入り
雨だれや子猫のヒゲ
ミトンやりんごのタルト
そういうのとおんなじなの
でも、あたしはあの人のお気に入りじゃない
成績は良くないし、ほかの子より目立たない
そしてあたしは、あなたに声をかけられない
それでもいい、だってあなたはあたしのお気に入り
誰にだって平等で
いつも考え事をしていて
ものごとを勝手にきめつけなくて
うたの美しさをしっていて
優柔不断だけど、優しくて強い
どんな理不尽にも真剣に立ち向かう
そんなあなたがお気に入りなの
だからあたしはお気に入りじゃなくていい
それがたとえ
犬に噛まれるより痛くて
蜂に刺されるより苦しくて
何よりも悲しいとしても
あなたはただのお気に入り
あたしの
私の…
2/17/2023, 10:53:38 AM