光頼

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夢見る少女のように

             「思い出ファイル」
音楽の授業、先生が大きく音程を外した。

自分は歌が嫌いだ。
昔音程を外してみんなに馬鹿にされたことがある。先生からは、
「今、音程を外してしまった人がいましたね。では、外さないようにするには
どうしたらいいでしょう。」
まるで教科書のキャラクターのように使われた。
とても辛かった。広めないでほしかった。この数分の出来事で、
自分は歌えなくなってしまったのだ。

今日は音楽の授業。あれから2年ほどたったが、今もまだ心に残っている。
頭のファイルに完全に記録されてしまったのだ。
その数分の動画は、覚えると悪影響。だけど消せない。
ウイルスのような存在だった。
そんななか、先生が歌のお手本で歌っていたのだ。

先生はいいよな。あんなに自信を持って歌えて。

ああなりたいというより、いらつく感情が大きかった、

今日もまた口パクだ。口パクって意外と疲れるんだよな。

「はぁ」ため息をつく。…だが自分の耳にはため息の音が聞こえなかった。

「あれ、やばくね?w」
隣の生徒の声が聞こえてきた。周りを見ると、全員が笑っているようだった。
視線の先は先生。どうらや音程を外して咳こんでいるようだ。
「あれ、今日先生調子悪いw」
「え〜なにそれーw」

やめてくれ。
過去の自分と重なった。
あの時の自分は、ただ笑うしか無かった。
笑わないと、つまんない人になってしまうのだ。

先生、ほんとは辛いんじゃないかな。
その時、自然と自分の目から涙がこぼれた。
「おい、だいじょうぶかよっ!?」
「あれっ、ンッ、おかしぃなぁ、だ、大丈夫っ!ヒッグ」


「大丈夫、大丈夫だか、ら」

大丈夫じゃない、くちにだすんだ。辛いって。
でも、この人達には言いたくないな。きっと僕の過去にこの人達がいたら、
笑っていたんだろう。いろいろ考えていると、もっとつらくなって、うずくまるしかなくなった。
ああ、もう無理だ。その時だった。

綺麗な歌が聞こえてきた、ところどころ音程が外れて、声もがさがさだ。
だけど落ち着く。そんな魅力を持っていた。これは、きっと先生の歌だな。
先生は、きっと自分をわかってくれる。そうだ、
今度話してみよう。そう思い、立ち上がって、先生といっしょに
歌のハーモニーを奏でられた。
久しぶりに歌ったから、全然声でないや。
でも、楽しい。うたうのって、こんなにたのしいんだ、
そのまま、一曲が終わるまで先生といっしょに歌った。
クラスのほとんどの人は嫌悪したり、呆れていたりしていた。
でも、一部の人は手拍子をしてくれたり、泣いている人もいた。
この授業は、ファイルにずっと残るだろう。
間違えて消さないように、保存しておきたいな。
また、こんな最高の歌を歌いたいな。

6/7/2025, 1:17:03 PM