1人で眠るには広いベッドで目が覚めた。ほんの少しの温もりに後ろ髪を引かれながらもベッドから抜け出した。
階段を降りて、洗面所の前に立つ。昨日と何ら変わらない酷く疲れた自分の顔。絵の中の住人なんかじゃないから、いくら水を掛けても肌の色が落ちたりしない。
テレビを付けて、冷蔵庫から母親が作って置いていってくれたカレーを取り出して、レンジに入れる。1分にタイマーをセットして、ボタンを押す。
最近はまた、物騒な事件が多いとニュースキャスターが言っているのを聞きながら、化粧ポーチを手に取った。
「おはよう」
階段から降りてきて、挨拶をされた。
「お、はよう」
「今日の夜さ、いつもの店でいいよね?」
「……うん。いつもの店に、19時だよね?」
「それ目指して仕事頑張るわ」
チン、と電子レンジが音を鳴らした。
現実に引き戻されるように、ぶわりと涙で視界が歪んだ。
「え、どうした!?」
昨日の私は絵の中の住人だったのだろう。そうじゃなきゃ、あんな黒い涙は流れなかったはずだ。昨日は真っ黒な服に黒い涙は全部吸い込まれた。
「ううん、何でもない。私も、今日の仕事頑張るよ」
そう言って、私は作った覚えのないクリームシチューを電子レンジから取り出して、テーブルに置いた。
昨日、君は私の居た世界から居なくなったのにね。
でも、ここが君のいる世界なら、私はここで生きてもいいよ。
パラレルワールド
9/25/2025, 10:49:31 AM