目が覚めると
黒色の金魚をポイで掬うとぴちゃんと水飛沫を上げ、ポイに穴が開く。
キミは幼い子供のように口を尖らせて、ぶーぶー言った。
「ぜったい、今のは獲れたと思ったのに」
穴の空いたポイをくるくると回して、屋台のおじさんに手渡す。
そして、ゆっくり立ち上がると僕の手を引いて、次の場所へ。
人混みをかきわけて、たどり着いた場所は、甘い匂いが漂うわたあめの屋台。
キミは舌舐めずりをして、僕に訴えてくる。
「わたあめが食べたいなぁ」
僕はくすくす笑いながら、頷いてわたあめをキミのために買う。
出来立てのわたあめを屋台の人からもらうとキミに渡した。
早速、嬉しそうにわたあめを食べた。雲のようなふわふわのわたあめを鼻のてっぺんにつけて、僕の方を見つめてくる。
苦笑しながら、ついているわたあめを取ろうとした瞬間、花火が夜空に上がった。
色とりどりに咲き乱れる花火はとても美しい。
大きな音が鳴り響くと同時にキミが何かを言ったが、聞き取れなかった。
もう一度、聞こうと耳を澄ませると――
――目が覚める。ピピピっと携帯のアラーム音が鳴り響いていた。
僕はゆっくり体を起こして、前髪をくしゃりと掴んだ。
「そっか、夢か」
何度懐かしい夢を見て、目を覚ましてもキミは――もういない。
7/10/2023, 1:31:52 PM